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安全に作業をするために!知っておきたい感電事故の原因や対策法

高電圧の電線の近くで作業する場合は感電のリスクが高いのはもちろん、
低電圧でも電気が通っている場所なら、ちょっとした気のゆるみで事故が起きることもあります。
安全に作業を遂行するためには、どのようなところに危険が潜んでいるか知っておくことが必要です。
また、事故を起こさないための対策をしっかり行い、
万一事故が起こってしまったときは冷静に対処しなくてはなりません。

下図は感電死亡事故のデータです。
感電のリスクが高い建設業と製造業で大半を占めています。


業種別の感電死亡事故数

https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2016/88-column-1.html
労働安全衛生総合研究所
安衛研ニュースNo. 88 (2016-02-05)
※当記事で引用しているデータの集計期間は平成15年から24年までの10年間です。

この記事では、感電事故の原因や起こりやすい場所、
事故を起こさないための対策などについて詳しく解説します。

1. 感電事故はなぜ起きる?主な3つの原因

そもそも感電とは、体内に電流が流れて刺激やショックを受ける状態のことを指します。「電流が流れて」とあるように、
単に電圧がかかっただけでは感電しません。

空気や水が温度の高いほうから低いほうに流れるのと同様に、電圧も高いほうから低いほうに流れます。
つまり、電圧の異なる場所に接触し、電気の流れる通り道ができることで感電します。
実際に感電するケースは主に以下の3つです。

1-1. 同時に2つの異なる電圧がかかる線に触れる

いわゆる「短絡」または「ショート」といわれる状態を作り出してしまうことで、感電事故は発生します。
電圧が異なる電線などを同時につかんでしまうと、
短絡(ショート)でできた回路に電流が流れてしまいます。

1-2. 電圧がかかる電線や電気機器に触れる

感電事故で最も多いとされているのがこのパターンです。
2つの電線に触れた場合と違って電線や電気製品などに1箇所だけ触れた場合、
電気が人体を通して地面に抜ける流れができます。

身の回りには電気を通しやすい「導体(導電体)」と電気を通しにくい「絶縁体」があります。
導体として最初に思い浮かぶのは鉄や銅をはじめとした金属でしょう。

ただ、地面も安定した導体であり、約60%が水でできている人体も電気を通します。
そのため、地面に足をつけた状態で電線や電気機器に触れると感電するのです。

1-3. 漏電している箇所に触れる

家庭でも起こりやすい感電事故がこのケースです。
漏電した箇所を触ったことで地面に電流が流れて感電します。

漏電しているかどうかは見た目ではわかりにくいので、気づかずに触れてしまうと危険です。

電線

2. 感電事故はどんな場所で起こりやすい?

2-1.漏電が起こっている場所

一般に出回っている電化製品やコード類には絶縁処理が施されており、
普通は触ったりつかんだりしても漏電することはありません。
しかし、どんなものでも老朽化するとあちこちに傷みが出てきます。

ゴムやビニールなどの絶縁体を巻いている部分も月日とともに劣化し、
導線部分が露出してしまうと感電を引き起こす原因になります。
そのため、老朽化した建物内での作業や機器の取り扱いには特に注意が必要です。

電気コード

2-2. 電力設備に接触しやすい場所

作業中の感電事故が発生しやすいのは、電力設備への接触です。
工事中や点検作業中などに、停電状態だと勘違いして通電しているケーブルに触れたり、
ブレーカーを落とし忘れたりした結果、感電事故に至ることもあります。
下図では、死亡事故例を接触場所別に分類したものです。
送配電線等・電力設備が大半を占めています。

また、アーク溶接装置や研削盤・バフ盤など、
人体ではなく機械が電力設備に接触し、機械を介して感電するケースもあります。


設備別の感電死亡事故数

https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2016/88-column-1.html
労働安全衛生総合研究所
安衛研ニュースNo. 88 (2016-02-05)

2-3. 夏は感電事故が起こりやすい!?

濡れた手で通電中のケーブルや漏電している電化製品に触るのはもちろんNGです。
それに加え、汗をかきやすい夏も注意が必要です。
実際に感電事故の発生が多いのは7、8月を中心とした夏期に集中しています。


月別の感電死亡事故数

https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2016/88-column-1.html
労働安全衛生総合研究所
安衛研ニュースNo. 88 (2016-02-05)

3 感電被害の程度はどんな条件で決まる!?

3-1. 被害の程度が決まる要因

感電することで人体に起こる被害の程度がどのくらいになるかは、

・電流の大きさ
・電流が流れた時間
・電流の流れたルート

の3つによって決まります。

3-2. 電流の大きさ・時間

もちろん、電流が大きくなればなるほどダメージも大きくなります。
ピリッとするくらいの1mAや少し痛みを感じる程度の5mA程度なら、まだ人体にそれほど悪影響を及ぼしません。

しかし、10mAくらいになると痛みが我慢できなくなり、20mAになると筋肉が痙攣し、電線等を簡単に離せない状態になります。

50mAになれば短時間でも死亡する可能性が高まります。
日本では、30mAを感知して0.1s(秒)で作動する漏電遮断器が一般的に用いられています。

・電流の強さによる人体への影響の違い


人体へ与える電流の影響人体へ与える電流の影響

https://www.jeea.or.jp/course/contents/10102/
公益社団法人 日本電気技術者協会
電気技術解説講座

3-3. 電流の流れるルートによる症状の違い

感電して体の表面に現れる症状として多いのはやけどです。
しかし、体内を流れる電流のルートによって、外からは見えないさまざまなダメージも受けます。

手や頭などから入って足まで抜ける間に心臓を通ると、心臓のリズムが崩れて不整脈や心室細動を起こす可能性があり、脳から入った場合は脳に大きなダメージを受けるかもしれません。

筋肉や末梢血管に損傷を受けることもあるほか、神経や脊髄に損傷を受け、時間が経ってから睡眠障害や記憶力の低下などの症状が現れる場合もあります。
筋肉が広範囲に損傷を受けると腫れて血管を圧迫します。

4. 感電事故を起こさないための対策

4-1. 電気が流れる場所に触れない

工事のプロなら不用意に電気が流れている電線やケーブルなどを、
直接触ってしまうことは少ないかもしれません。
ただし、停電していると勘違いして触ってしまうことや、
使っている機械や工具が触れてしまうリスクはあります。

また、絶縁処理がされていても、被覆が剥がれている場合もあります。
事故や事故まで至らないヒヤリハット事例は、意外と小さな見逃しや確認不足で起こり得るものです。

作業を開始する前にはブレーカーを落とすなど、確実に電気を遮断し、
電気が流れていないことを確認してから作業をはじめるように徹底しましょう。
通電したまま作業する場合は、絶縁用保護具や活線作業用器具を使用する必要があります。
使用する保護具や器具などは常に異常がないか点検しておくことも大切です。

4-2. アースや漏電遮断器の設置

絶縁体で保護されている電動工具は通常なら触れただけで感電することはありませんが、絶縁状態が悪くなっていれば感電の危険があります。

万一の感電を避けるためにも、電動工具を使って作業するときは必ずアース(接地)することが大切です。
また、二重絶縁が施された工具を使用することで感電のリスクを減らすこともできます。
さらに、漏電遮断器を設置することで、いち早く漏電を検知することが可能です。

感電 

5. 感電事故が起こったらどうしたらいいのか

5-1.すぐに医療機関を受診する

表面的にはそれほど酷くないように見えても、内部はかなりダメージを受けている場合もあります。
たとえば、血液の循環不全を引き起こしてる場合、
切開して電圧を逃さなければ組織が壊死することもあります。

もし、すぐに明らかな症状がなかったとしても、必ず医療機関を受診するようにしましょう。
他人が感電する場面に遭遇した場合も、必要に応じて救急車を呼び、
医療機関で速やかに診てもらえるようにすることが大切です。

5-2. 少しでも早く電源を切る

感電して電気がまだ流れている状態の場合、まずはコンセントを抜く、スイッチを切る、ブレーカーを落とすなど、少しでも早く電源を切ることが大切です。

ただし、20mA以上になると電線などをつかんだまま握って離さないことがあるほか、
簡単に電気を切れない状況もあります。
そのようなときは、ゴム手袋やゴム長靴を身につけたり、電気を通しにくい木の棒などを使ったりなど、
自分も感電しないように気を配りながら電源を切りましょう。

5-3. 呼吸、脈拍をチェックする

安全な状態を確保できたら意識があるかどうかを確認し、呼吸や脈拍などもチェックします。
電流が通る場所によっては心停止や呼吸停止を引き起こすことがあるかもしれません。
救急車を呼んでも到着するまでには数分がかかりますから、
心停止や呼吸停止の状態に陥っている場合は心肺蘇生法をはじめましょう。

6. 日常生活で感電に注意して生活するには?

電化製品にアースをつける、ブレーカーに漏電遮断器をつけるなど、
少しでも漏電を防ぐ対策を整えておくのはもちろんですが、ほかにも感電するリスクは潜んでいます。
そのなかでも感電事故が多い場所のひとつがコンセントです。

6-1. コンセントの扱いに注意する

コンセントに金属類が入ると感電してやけどを負うことがあります。
小さな子どもがいる家庭では、子どもがコンセントにヘアピンやクリップなどの金属類、おもちゃなどを、
差し込んでしまわないように注意しましょう。

6-2. 濡れた手で触らない

また、水分がつくことも感電する原因のひとつです。
濡れた手でコンセントを触るのは避け、赤ちゃんが舐めないよう、カバーを付けるなど対策しましょう。

長年プラグを差し込んだままのコンセントや普段掃除しにくい場所にあるコンセントは、
溜まったホコリが水分を含んで漏電することがあります。
発火するトラッキング現象を引き起こすこともあるため、ホコリはこまめに掃除することも大切です。

感電防止

7. 感電事故を防ぐ対策は確実に施し、リスクに備えておくことが大切

感電死亡事故の主な原因はヒューマンエラーです。

感電死亡事故の原因

https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2016/88-column-1.html
労働安全衛生総合研究所
安衛研ニュースNo. 88 (2016-02-05)

電圧のある場所には不用意に触れないなど、
基本的な確認を徹底することが事故のリスクを減らすことにつながります。
家庭内で起こりやすいコンセントでの感電事故も、少し注意すれば防ぐことが可能です。

また、漏電による感電事故の場合、一見して漏電していることがわからないこともあります。
しかし、あらかじめ漏電遮断器をつけておくことでいち早く漏電を察知することが可能です。

ときには命の危険につながることもある感電。あらかじめできる対策は確実に施し、
万一感電してしまったときは適切な対応をスムーズにできるようにしておきましょう。

感電事故を起こさないために、電気製品についてもっと詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

東京電力パワーグリッドHPより
◆電気のトラブルならパワーグリッド◆


今回のコラムはここまでです。ありがとうございました。
他にもいろいろなコラムを掲載していますので、ぜひご覧ください。

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