SDGsに貢献する電気自動車(EV)
先日のコラムのSDGsへの取り組みはできることから~まずは知ることから始めてみませんか?で、SDGsに取り組むことへのメリットやハードルについてご紹介しました。
では、具体的にどんな取り組みをすればいいのでしょうか?
そこで今回のコラムでは、電気自動車(EV)を用いたSDGsへの貢献についてご紹介いたします。
ガソリン車からEVへのシフトは、環境に与える影響が大きく、世界的な潮流になっています。今はまだピンと来ない話かもしれませんが、少しずつ頭に入れておくことは無駄ではないと思います。
1.SDGsへの貢献
電気自動車の普及がどのようにSDGs達成へ貢献するのか?
これはずばり、二酸化炭素(CO2)の削減です。
SDGs目標7: エネルギーをみんなに そしてクリーンに に貢献します。
石油など化石燃料の枯渇は、SDGsが公表されるずっと前から言われていることですが、「2030年までに何をするか?」と具体的に定められたことがSDGsの特徴です。
上上のグラフは、日本国内における二酸化炭素排出量を部門別に分類したものです。この中で運輸部門は3位、20%弱の割合を占めています。この部分がEVに置き換わると二酸化炭素の削減につながります。
2.電気自動車の普及の現状
電気自動車がSDGsに大きく貢献できることは分かりました。
それでは、現在電気自動車はどの程度普及しているのでしょうか?
2.1 電気自動車の販売状況
こちらの2つのグラフは、電気自動車の販売台数とそのシェアを示しています。
世界全体では2020年で約300万台販売され、そのシェアは4.6%です。2011年から連続して上昇傾向にあります。電気自動車へのシフトが世界的な潮流であることが、よく分かる結果です。
一方で日本国内では2020年で約3万台販売され、そのシェアは0.6%にとどまっています。
2.2 電気自動車普及に向けた目標設定
国内での普及に向けて、政府は2020年12月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」の中で、以下のように宣言しています。
乗用車は、2035年までに、新車販売で電動車100%を実現。
※参考 経済産業省ウェブサイト
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 自動車・蓄電池 より
https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/
政府だけでなく、自動車メーカーも独自に目標を打ち出しています。
そのうちの一部を紹介いたします。
【トヨタ自動車】
2030年にバッテリーEVのグローバル販売台数で年間350万台を目指す
30車種のバッテリーEVを展開する
※参考 トヨタ自動車 グローバルニュースルーム
バッテリーEV戦略に関する説明会より抜粋(2021年12月)
https://global.toyota/jp/newsroom/corporate/36428939.html
【日産自動車】
2026年度までに電動車(ハイブリッド車含む)の販売比率を
欧州で75%以上、日本で55%以上、中国で40%以上、
米国では、2030年度までにEVの比率を40%以上にする
※参考 日産自動車ニュースルーム
長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」より抜粋(2021年11月)
https://global.nissannews.com/ja-JP/releases/211129-00-j
【ホンダ】
EV、FCVの販売比率を2040年には、グローバルで100%
※参考 Hondaホームページ 2021年4月23日 社長就任会見より抜粋
https://www.honda.co.jp/news/2021/c210423.html
※FCV : 燃料電池自動車
補足として、目標にある「電動車」という表現は、動力源に電気を使う自動車の総称です。電気自動車(EV)のほかに、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)の計4種類があります。
ちなみに、世界ではもっと高い目標が提案されています。
欧州委員会(EUの行政執行機関にあたる組織)では、乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則について、2021年7月14日に以下の改正案を発表しています。
新車のCO2排出量を2021年比で2030年までに55%削減、
引用元
2035年までに100%削減
日本貿易振興機構(JETRO) ビジネス短信 より抜粋
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/07/d870a9cd8282f522.html
これは二酸化炭素排出量に対して数値目標で、ハイブリッド車の新車生産も実質禁止とする内容です。
3.SDGsへの阻害要因
EVへのシフトは世界的な潮流、と述べてきましたが、「EVが本当に環境負荷を軽減するのか?」という意見もあります。
ここで、環境負荷に関連して、自動車のエネルギー効率を測る2つの考え方をご紹介します。
◆Tank to Wheel (車内の燃料タンクから駆動まで)
◆Well to Wheel (油井から駆動まで)
TaTank to Wheelは、自動車内部のエネルギー効率を見る考え方で、昔からあります。燃料タンクにガソリンが入った状態、もしくはバッテリーに充電された状態で、走行時にどれだけの二酸化炭素を排出するか、という観点です。これはEVだと理論上ゼロということになります。
一方でWell to Wheelは、油井・油田から採掘され、運搬・精錬の後、燃料タンクに入れて、それから走行時にどれだけ二酸化炭素を排出するか、という観点になります。EVの場合は、希少金属を採掘し、運搬・加工してバッテリーを製造し、充電して、それから走行時にどれだけ排出するか、という観点です。
EVの導入を検討する際、即断即決というわけにはいかないと思いますので、このような様々な考え方を知ることが、まずは大切になります。
4.東京電力グループが取り組む電気自動車の普及
東京電力グループでは、これまでも様々な切り口でEV普及に取り組んでいますが、このコラムでは、
・東京電力グループ業務車両の電動化
・日本郵政グループさま・三菱自動車さまとの実証実験
を紹介します。
東京電力グループでは、車両のゼロエミッション化を目指す国際イニシアティブ「EV100」に加盟しており、2030年度までに約3800台の業務車両を電動化することを目標にしています。また、走行時のCO2排出量をゼロとするため、グループ会社の日本自然エネルギー株式会社より「グリーン電力証書」を購入し、充電に使用する電力に自然エネルギーにより発電された電気の環境価値を付加し、車両の走行分電力をカーボンフリー化しています。
国内エネルギー企業として初、電気自動車の導入を推進する「EV100」
および「EV30@30キャンペーン」に加盟
~2030年までに業務車両を100%電動化へ~
(東京電力ホールディングス 2019年5月28日 プレスリリース)
https://www.tepco.co.jp/press/release/2019/1515172_8709.html
当社グループ電動業務車両の走行に再生可能エネルギーを100%活用
~電動業務車両走行分の「グリーン電力証書」を取得~
(東京電力ホールディングス 2021年6月1日 プレスリリース)
https://www.tepco.co.jp/press/release/2021/1612675_8711.html
カーボンニュートラルを推進する企業として率先してEVを導入し、自らを導入する過程で見えてくる様々な課題の解決や、社内各所における取り組みの好事例やアイデアを集約するなど、社内で蓄積した知見を社外への提案につなげていきたいと考えています。また、地域のみなさまにEVを身近な所でご覧いただき、ご関心をもっていただけるように努めております。
2021年4月に、東京電力HDは日本郵政グループとカーボンニュートラル化の推進に向けた戦略的提携について合意しました。全国約2万4,000拠点の郵便局を運営する同グループとの提携により、地域のカーボンニュートラル化とレジリエンス強化を推進します。2021年11月に、栃木県の小山郵便局、静岡県の沼津郵便局にて実証実験を開始しました。
カーボンニュートラル化の推進に向けた日本郵政グループと東京電力グループの戦略的提携の合意について
(東京電力ホールディングス 2021年4月23日 プレスリリース)
https://www.tepco.co.jp/press/release/2021/1599225_8711.html
カーボンニュートラル化の推進に向けた実証実験の開始および三菱自動車工業株式会社の参画について
(東京電力ホールディングス 2021年10月29日 プレスリリース)
https://www.tepco.co.jp/press/release/2021/1653525_8711.html
【イメージ図】
5.まとめ
今回のコラムでは、EVを用いたSDGsへの貢献についてご紹介いたしました。
お読みいただき、ありがとうございました。