高所作業での危険を回避する方法
工事現場において、高所での作業は頻繁に発生します。
地上での作業と比べ、危険なことは言うまでもありません。
そもそも高所作業とは、一般的に高さ2m以上での作業を指します。
作業床を設けることが義務付けられており、
それが困難な場合は墜落制止用器具(旧名称:安全帯)等を使用しなければなりません。
(作業床の設置等)
(引用:労働安全衛生規則より)
第五百十八条 事業者は、高さが二メートル以上の箇所(作業床の端、開口部等を除く。)で作業を行なう場合において墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、足場を組み立てる等の方法により作業床を設けなければならない。
2 事業者は、前項の規定により作業床を設けることが困難なときは、防網を張り、労働者に要求性能墜落制止用器具を使用させる等墜落による労働者の危険を防止するための措置を講じなければならない。
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000473567.pdf
そして、2019年2月1日には労働安全衛生法施行令が改正され、
「高所作業での墜落制止用器具は原則フルハーネスにする」などの内容が盛り込まれました。
また、作業員自身の危険だけでなく、
工具などを落として下にある物や人を傷つける危険もあります。
この記事では、 法令の改正の説明や、落下災害で起こった事故事例や被害状況、
工具類の落下防止ができる方法などについてご紹介します。
※ 送電鉄塔でのがいし取替作業 (イメージ)
1. 労働安全衛生法施行令の改正内容
2019年2月1日に労働安全衛生法施行令が改正されました。
安全帯の名称自体が「墜落制止用器具」へ変更となり、
高さ6.75m以上の作業では、「フルハーネス」を着用することが原則となりました。
また、一般的に建設業に関しては、
高さ5m以上の作業で「フルハーネス」を着用することが推奨されています。
ただ、2021年12月31日までは「猶予期間」となっており、
現行の器具を使用することは可能ではありますが、
期間終了間際になって新しい器具を用意しようとすると、
メーカーの在庫不足や作業者の器具への「慣れ」が不十分なおそれもありますので、
早めの取り替えが推奨されています。
引用 : 厚生労働省 墜落制止用器具の安全な使用に関するガイドライン リーフレットより
https://www.mhlw.go.jp/content/11302000/000473567.pdf
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2. 落下で起こった事故の事例
ここでは、高所作業での事故には実際どのようなものがあるのか、
一例をあげてみましょう。
枠組足場に取り付けたブラケット足場を始業前に点検したとき、足場板の結束が切れている箇所があったために結束し直しながらブラケット足場上を移動していたところ、上方より声を掛けられ上を見た際、足を掛けた2枚重ね部分の足場板が滑り足場板とともに約1.5m墜落。
工場プラン卜の定期修理現場で、工事材料を運搬していた下請けの工事作業者の保護帽(樹脂繊維製ヘルメッ卜)に、高さ約8m の工事場所から金属部品(1.5kg)が落下してきて当たり、衝撃で帽体が破損して脳挫傷の重傷を負った。
他にも、一般住宅の二階のベランダで作業中、
手を滑らせたことで使用中の電動ドリルが下に落ちるという事故が起こっています。
工具類を落とし、他の作業員に当たりそうになるという事故は珍しいことではありません。
また、高所作業車に乗って作業しているときに、
バケットの外側につけていた工具箱が電線に引っかかってしまい、
そのまま落下するという事故も起こっています。
落下事故というと、看板や外壁など大きなものを心配する方もいるかもしれませんが、
工具類の落下も危険をともないます。
特に高さのある場所での作業では、下の状況がわかりにくいうえに、
距離があるので当たったときの衝撃は大きくなるでしょう。
3. 建設現場や工事現場で行われている工具の落下防止とは?
人の落下防止に対しては、先ほど紹介したフルハーネスの墜落制止用器具などがありますが、
物の落下防止に対しては、どんな方法があるでしょうか?
例えば、落下防止ネットを張る方法があります。
設置方法としては、多角形のネットを広げ、
内側部分を電柱などの作業対象に巻きつけて固定するというのが通常です。
落下防止ネットより上で作業を行えば、
万が一工具類を落とすことがあっても地面まで落下させることはありません。
他によく使われているのは、落下防止ロープです。
セーフィティコードやセーフティワイヤーともいわれているもので、
ロープやワイヤーの端についたフックに工具類を繋いで使います。
ロープやワイヤー部分には伸縮素材を使用したものも多く、
万が一手から離れたときでも衝撃を抑えてくれる役割も持っています。
落下防止ロープは、フックが使える環境や工具類の使用に便利な方法です。
※ 送電鉄塔でのワイヤーをつけた作業例 (イメージ)
4. まとめ
ここまで、人の落下・物の落下について説明しましたが、
どんなに用具を用意しても、
人の不注意一つで、事故は発生してしまいます。
悪天候下や時間の制約が厳しい中での作業ですと不安はついて回ります。
また、プライベートでの不安を抱えていると、
目の前の作業に集中しきれないこともあるでしょう。
避けられない不安はあるでしょうが、
なるべく不安が少ないコンディションで作業を行えるように、
体調管理に気を付けるなど、個人個人の取り組みが危険回避につながります。
用具を過信することなく、一人ひとりが危険への意識を高く持つことが、
一番大切なことだと言えるでしょう。