工事現場の防犯対策 1 コロナウイルス影響の資材不足で盗難リスクが高まっています!
自宅の防犯も大事ですが、工場や作業現場、オフィスの防犯も欠かせません。
直接的には金品や資材の盗難がありますが、中には機密情報が狙われたり、異物を混入される可能性があります。
また、盗難に遭わなくても敷地に侵入されたという事実は、企業の信用を損ねることになりますので、
防犯に力を入れない理由はありません。
そこで、この記事では防犯対策の心構えや注意点について、主に工事現場を中心にまとめてみました。
工事現場は屋外が中心なので、侵入を許しやすく、手に入りにくい金属や工具が狙われたり、コロナウイルス影響下での資材不足から資材そのものが狙われるようになっています。
1. 盗難が起こりやすくなった背景と盗まれやすい資材
そもそも、なぜ工事現場で盗難が発生しやすくなったのでしょうか。
建設現場や工事現場では1つの業者だけでなく、複数の業者が出入りするため、犯人を特定しづらい環境といえます。
そのため、建設資材や私物を狙って計画的に犯行をする人がいるので注意が必要です。
金目のものが置いてある事務所を重点的に狙われることもあります。
盗難対策についての理解を深める前に、盗難が起こりやすくなった背景と盗まれやすい資材について知っておきましょう。
1-1. 工事現場で盗難が起こりやすくなった理由
なぜ現代でこれほどまでに工事現場における盗難事件が話題になってきたかというと、一昔前に比べて建築資材の価格が大幅に上昇していることが関係しています。
出典 : 一般財団法人 経済調査会HPより建築資材価格指数-(グラフ10都市)
2000年代前半ごろから2008年に開催された北京オリンピックに向けて、建築資材の高騰が始まりました。
その後も日本ではオリンピック需要もあり、建築資材の価格が下落する傾向にはありません。
特に、コロナウイルス影響下での高騰はここ20年で最高値となっています。
つまり、建築資材が高値で転売されるようになってしまっているのです。
犯罪者にとってメリットが生まれてしまった結果、工事現場にある建築資材を狙っての盗難が発生しやすくなっています。
1-2. 盗まれやすい資材とは?
基本的に工事現場にあるものは何でも転売されてしまうので、盗難の対象に含まれていると考えておきましょう。
しかし、そのなかでも特にステンレス建材や銅線といった金属類は高値で転売されるケースが多く、盗難の的になるケースが多いです。
実際に「SOMPOリスケアマネジメント株式会社」が工事現場で盗難にあった資材を2016年12月に調べたところ、
「敷鉄版(28.2%)」が第一位「ケーブル(23.1%)」第二位になっています。
盗難被害のうち、実に半数以上は金属類が占めているということです。
1-3. 具体的な防犯対策の考え方
盗まれやすいのは金属類でしたが、実際にどのような防犯対策が考えられるのでしょうか。代表的な考え方は2つあるとされており、それぞれを紹介していきます。
1-4. 基本は簡単に持ち去られないようにしておく
防犯対策の考え方の1つ目は「簡単に持ち去られないように工夫すること」です。
工事現場に限らず、盗難をする犯人は現場に長くとどまることを嫌がるようです。
そのため、犯人に「持ち去るのが難しそう」だと思わせれば、抑止力が期待できるのです。
たとえば、盗難のターゲットになりやすい敷鉄版であれば、溶接しておくのも一案です。
溶接しておけば、重機を使わずに持ち去ることはまずできません。
また、同様に盗まれやすいケーブルドラムについては、ほかの大型の資材とチェーンなどで結びつけておくのも方法のひとつです。
様々な方法を使って簡単には持ち去れないような状況を作りだすことを心がけましょう。
1-5. 価値をなくすことで盗難被害を受けにくくする方法もある
工事現場における盗難は、ほとんどが転売目的です。
そのため、転売するほどの価値をなくすというのも有効な対策だといえます。
具体的には建築資材に会社名や番号などを記載しておく方法があります。
消しにくい塗料や直接刻み込むなどの方法で明記しておけば、簡単には転売できなくなります。
わざわざ印字された文字を消すのは大変なので、盗難のターゲットから外れる可能性が高くなるでしょう。
2.窃盗以外の建設現場で起こる可能性がある被害
建設現場や工事現場では、夜間や人が少ない時間帯を狙って犯罪や違法行為を行う人がいるので注意が必要です。
まずは、建設現場や工事現場で被害に遭うことが多い犯罪や違法行為を例示していきます。
2-1. 放火
建設作業は、夜間は資材を現場に置いていくケースも多いでしょう。
マンションや住宅を建設する際には、燃えやすい資材を多く使うため、夜間や人が少ない時間帯を狙って放火をされてしまう可能性があるので注意が必要です。
放火をされてしまうと、企業にとって大きな損失になってしまいますが、防犯カメラがなければ放火犯を特定することが難しくなります。
2-2. 不法侵入
建設現場や工事現場では、不法侵入をされてしまうことがあるので注意が必要です。
不法侵入がしやすい建設現場の場合、下調べをして計画的に窃盗や放火を起こされてしまう可能性が高くなります。
建設現場や工事現場に防犯カメラを設置することで、犯罪を未然に防ぐことができるだけでなく、怪しい人物を特定することもできるでしょう。
3. 防犯の心構えと注意点
具体的な防犯対策がわかっても、きちんとした心構えができていなければ十分な効果が期待できない可能性もあります。
防犯の心構えと注意点についても理解しておきましょう。
3-1. 先入観にとらわれて対策をおろそかにしないこと
犯人は建築現場のスキを見逃さずに盗難などの犯罪を実行してきます。
基本的には金属類がターゲットになるケースが多いですが、油断していると思わぬものを盗まれかねません。
実際に工事現場において、事務所のコピー機やデスク、自転車などが盗まれる事例もあるのです。
「金属類やショベルカーなどの重機の対策を万全にしているから大丈夫」だと考えていると、被害にあうかもしれません。
現場の仕事に直接的な影響はなくても、盗難が発生したという事実だけで余計な心配が増えてしまいます。
どんな物でも盗まれないように、先入観にとらわれて対策をおろそかにしないようにしましょう。
3-2. 内部犯行も絶対にないわけではない
盗難対策の注意点として挙げられるのが、「内部犯行の可能性」です。
どれだけ準備を万全にしていても、内情を知る内部の人間が手引きをしていればほとんど意味がありません。
実際に内部の協力者が実行犯を誘導して盗難が起こった事例もあります。
特に大規模な現場になると出入りする人の数も増えて、一人一人のチェックが難しくなりがちです。
そこで、大切なのは資材の管理責任者をきちんと決めておくことだとも言えます。
誰もが手軽に資材の搬入時期を知っていると、犯行計画を組みやすくなってしまうでしょう。
資材の管理を行う人物に責任を持たせて情報管理させ、不特定多数の人に漏洩させないようにすることも大切です。
3-3. 保険に入るのも対策のひとつ
工事現場での盗難における被害を軽減するための方法として、「建設工事保険に加入しておく」というものがあります。
たしかに、建設工事保険に加入していれば盗難が対象になるケースもあるため、金銭的な被害を軽減することが可能です。
ただし、一般的にすべての盗難が対象になっているわけではないため、それぞれの条件をよく確認しておきましょう。
一般的に対象になるのは、「契約していたときに対象物に含めているもの」です。
建設工事保険の対象物には、
・工事の目的物
・工事に付随する仮工事の目的物
・工事用資材・材料、工事用仮設材
などがあります。
当然のことながら、保険の対象物になっていないものが盗まれても保険金は支払われません。
また、建設工事保険は「基本的に工事中の工作物に対する保険であるため、工事作業を行うための機械や道具は含まれない」という点にも注意しておきましょう。
4. 大切な資材のために防犯対策を検討しておこう
残念ながら、工事現場における盗難などの犯罪被害は後を絶ちません。
なかには、内部犯行によって盗難が発生しているケースもあります。
そのため、どのような現場においても盗難など犯罪対策の重要性は増してきているのが現実です。
対策にあたって費用はかかりますが、盗難が原因で工期が遅れてしまうことや、そもそも侵入を許したという事実で、社会的な信用を失いかねません。
結果的に盗難された金額以上の被害を被ってしまうリスクもあるので、そのようなことが起きないように工事現場における盗難対策を積極的に検討しておきましょう。
次回の記事では
工事現場の実際の防犯対策についてお伝えしていきます。